相談事例
実際のご相談事例は、複雑な権利および資産関係にあるものが多いのですが、このコーナーではなるべく簡略化して掲載しています。
また、税法は目まぐるしく変化するため、相談のあった時代と現在では解決手法が異なる場合もございますので、あくまでご相談の参考としてご覧下さい。
事例①
(分割トラブル)平成24年
相談者・・・・・・・・次女:ヨシエ(1/4) 母:フミ(1/2)
トラブルの相手方・・・長女:タカコ(1/4)
相談内容
次女ヨシエは、数年前より父母の介護のため、夫や子供達と共に実家で同居していたところ、父の死亡により、自宅(1000万円)と預金(3000万円)が遺された。
長女タカコは、10年以上実家には寄り付かなかったのだが、父の体調不良を聞いてからは頻繁に顔を出すようになり、葬儀を終えると、すぐ遺産を開示して法定相続分で分けるようにと要求してきた。
次女ヨシエは病気で車椅子の母フミと相談し、遺産の中から母フミと長女タカコに現金を渡し、次女ヨシエが自宅を相続するという分割案を提示した。
分割案
母 フ ミ・・・預金2000万円
長女 タカコ・・・預金1000万円
次女 ヨシエ・・・自宅1000万円
これを聞いた長女タカコが憤慨し、母フミに自宅を相続させなければ承知しないと怒鳴って電話を切り、一切の手続きに応じなくなった。
本件の着目点
Q.なぜ、長女タカコは、母フミに自宅を相続させたいのか?
A.長女タカコは、母フミと同居する次女ヨシエが母の死亡前に預金をすべて使ってしまうのではないかと疑ったのです。自由に引き出せる預金ではなく不動産を母に相続させれば、母の死亡によってもう一度相続できるチャンスがあると考えたのです。
解決手法
当事者同士が直接話せる仲ではなくなっていましたし、長女からの言葉の暴力に次女が怯えていたことから、すぐに弁護士が受任しました。
また、相続アドバイザーの助言により、母フミの遺言を公正証書で作成し、司法書士が遺言執行者となることで次女の盾になれるように準備して二次相続に備えました。
長女タカコがその後も分割に応じないため、受任弁護士は、裁判所がすでに同居している次女ヨシエが自宅を相続することは自然であると判断すると予想し、審判の申立を行いました。
最終的は審判を受けるまで争いましたが、こちらの提案通りの分割方法で遺産分割することができました。
その後、税理士の助言を受け、特別受益とならないように次女ヨシエの子供たちに教育資金として生前贈与を行いました。
事例②
(資産組換)平成15年
相談者・・・・・・・・母:マユミ(62歳)無職
同居家族構成・・・長男:マサヒコ、嫁:アキ、孫:ユウヤ
相談内容
母マユミは、自宅の土地建物(土地100坪、1階貸駐車場、2階自宅)を先祖の遺産として相続して保有しているが、現金資産がほとんど無いうえに、無年金者であることから老後への不安がある。
自宅が古いので賃貸マンションへ建て替えないかと何度も営業を受けるが、個人事業者の長男に多額の借金を残したくない。
本件の着目点
Q.多額の借金をせずに、母マユミの老後資金を作りながら、古い自宅を長男世代が十分に使える建物に建て替えたいという希望をいかに叶えるか?
A. 母マユミの老後資金は、資産運用に対するリスク許容度などを計りながら、老後資金を確保するシミュレーションを行って判断します。
また、借金をせずに自宅を新築するには、土地の一部または全部を譲渡して資金を捻出するしかありません。
売却方法や売却可能額、譲渡所得税などを考慮して、効率的な現金資産の捻出を総合的に判断する。
解決手法
不動産FPと税理士の試算により、売却見込額と譲渡税額を比較検討した結果、土地全部を2億円でマンション業者へ売却し、居住用財産譲渡の特例が受けられる1億円は買換え特例を利用して、近隣に土地を購入して2世帯住宅を建築しました。
- 高さ制限の緩和を受けて容積率300%が使いきれることから、一括で売却すればマンション業者が相場よりも10%程度高く買ってくれることが分かりました。
- 譲渡税は「3000万円特別控除+低率分離課税」よりも「買い替え特例」の方が安くなるという試算により、買い換え特例を選択しました。
貸駐車場の事業用部分の譲渡金1億円の残余金は、なるべくリスクを負いたくないという母マユミの意向に合わせ、次のようなポートフォリオを組みました。
- 一時払い終身生命保険 1000万円
- 個人国債 2000万円
- 中古アパート 7000万円(長男が保証人となり2000万円の借入)
嫁アキと養子縁組をして法定相続人としたうえで、司法書士を立会人として公正証書遺言を作成しました。